越境型イノベーター リカレントエコシステム人材育成プログラム開催レポート|地域と都市をつなぐインタープレナー育成の実践

本プログラムは、地域と都市を往復しながら社会課題を理解し、共創による事業構想を生み出す人材(インタープレナー)の育成を目的として実施しました。北海道大学 社会・地域創発本部およびSUNDRED株式会社が共同で企画し、SUNDRED株式会社が運営を担いました。地域と都市をつなぐエコシステム型イノベーションを担う次世代リーダーおよびリカレント人材の育成を目指した取り組みです。

プログラムは、札幌・苫小牧・東京の3拠点で実施し、社会課題の理解から事業構想までを段階的に学べる構成としました。参加者は、企業、自治体関係者、研究機関、個人事業主など多様なバックグラウンドを持つ方々で構成され、都市と地域を往復することで視野を広げながら、共創的な議論を通じて新たな事業アイデアの創出を目指しました。

開催日程・会場
・2026年1月15日 Day1:社会課題の構造理解と問いの設定(北海道大学社会・地域創発本部)
・2026年1月16日 Day2:フィールド視察とアイデア仮説構築(苫小牧市COCOTOMA-ココトマ)
・2026年2月12日 Day3:事業モデル設計と最終発表(東京・京橋 Incubation CANVAS
TOKYO)

・総研修時間:約20時間

・主催:北海道大学 社会・地域創発本部

・協力:苫小牧市、SUNDRED株式会社

・企画・運営: SUNDRED株式会社

・参加者属性:企業社員、自治体関係者、研究機関、個人事業主

■ Day1(札幌) 社会課題を構造的に理解する

都市と地域の関係性や北海道の社会課題を理解するインプットセッションとワークショップを実施しました。「表層→構造→未来」のフレームを用いて、課題を構造的に捉える視点を学びました。

・登壇者:吉野正則 氏(北海道大学社会・地域創発本部 本部長・特任教授)、深田昌則 氏(SUNDRED株式会社 EVP/CKO兼CVO、パートナー)

■ Day2(苫小牧) 現場視察による課題の体感

苫小牧市にて、まちづくり計画の説明、地域施設の視察、意見交換を実施しました。現地視察を通じて地域の課題と可能性を議論し、チームごとに事業アイデアの仮説を構築しました。

・登壇者:成田晃 氏(苫小牧市 総合政策部未来戦略担当部長)、深田昌則 氏(SUNDRED株式会社 EVP/CKO兼CVO、パートナー)

■ Day3(東京) 事業構想と社会実装

事業化設計に関するインプット、事業モデル設計、最終プレゼンテーションを実施しました。社会課題と事業機会を結びつけた構想を、参加者それぞれが具体的な形で発表しました。

・登壇者:上村遥子 氏(SUNDRED株式会社 EVP/CIEO、パートナー)、深田昌則 氏(SUNDRED株式会社 EVP/CKO兼CVO、パートナー)

本プログラムは、対話と共創を重視しながら進行しました。苫小牧での現場視察では、企業、行政、地域住民など多様な視点が交差し、活発な議論が展開されました。

参加者は、地域の現場にある課題を地域の内側だけで閉じずに捉え直すきっかけを得て、「地域と都市をつなぐ課題」や「インタープレナーシップ」への理解を深めました。また、社会起点の目的を意識しながら、組織の壁を越えて価値共創に取り組む視点を養いました。特に、現場観察を行った苫小牧市では、半導体、GX、駅前開発、データセンターを軸に、産業振興、快適な住環境、交通物流、人材育成を一体的に考える未来まちづくり戦略が進められており、地域の将来像そのものが再設計の局面にあることを体感しました。

参加者からは、「日本の地方で起きていることは世界でも起きている」「今の日本は未来の世界として読める」といった受け止めも見られました。北海道や苫小牧を単なるローカルな事例ではなく、社会変化の先行地域として捉え、東京での最終回においても自分ごととして関わろうとする意識が高まり、積極的な議論と発表につながりました。

Day1では、深田 昌則氏による「都市と地方の往復とイノベーション」、吉野 正則氏による「北海道の社会課題と産業ポテンシャル」を軸に、地域と都市を往復しながら未来を構想するための視点が共有されました。参加者は、グローバルな視点や、日本全国で進む人口減少と意識のギャップなどについて理解を深め、都市と地方は上下関係ではなく、それぞれの特性を活かした役割を持ちながら共創することが重要であると認識しました。

Day2では、苫小牧市での現地視察セッションを実施しました。苫小牧市 総合政策部 未来戦略担当部長の成田 晃氏による未来まちづくり戦略の共有に続き、関連施設の視察、現場観察、対話型ワークを行いました。参加者は、海の駅「ぷらっとみなと市場」で苫小牧名物のホッキカレーを味わい、開館間近の苫小牧市民文化ホール「ART CUBES」やnepiaアイスアリーナを見学した後、地域の事業者や市民の皆さまと具体的なテーマについてグループディスカッションを行いました。インプットとフィールド視察・現場観察を往復することで、現場の課題についてより具体的に議論することができました。

Day3では、上村 遥子氏が、社会課題を事業に変える設計と、共創の場づくりの実践に向けて、インタープレナー(越境共創人材)として一歩踏み出すことの重要性を共有しました。続く共創ワークショップでは、「How Might We思考」「課題構造化」「可能性の翻訳」といった手法を体験的に学びました。同じテーマでもグループごとに切り口が大きく異なる議論が展開され、記者会見や寸劇形式での発表を通して、多様な視点が新しい事業・産業づくりのアイデアにつながることを実感する機会となりました。

本プログラムを通じて、参加者は地域課題を「観察する対象」ではなく、「自ら関わることのできるテーマ」として捉え直すことができました。地方創生は机上の空論ではなく、現場を行き来することで地域の魅力と課題の解像度が高まることを、実感をもって学ぶ機会となりました。

実際に、本プログラムをきっかけに、今後も苫小牧市とのプロジェクトに取り組む意向を示した参加者もいました。また、参加者同士のつながりを今後も継続し、具体的なアクションにつなげようとする動きも生まれました。都市部の多様な背景を持つ参加者同士が世代を超えて関係を築き、そのつながりが地域での活動の原動力となる可能性が示された点も大きな成果です。

プログラム全体の満足度については、77.8%が「満足」と回答しており、全体として好評でした。また、「今後同様のプログラムがあれば参加したいか」という問いに対しては、88.9%が「参加したい」と回答しており、高い評価を得る結果となりました。

参加者の声:

「北海道苫小牧の現地を実際に見て現地の方々とコミュニケーションができたことはとても有意義でした。間接的に見聞きして検討するよりずっとリアル感があり、また現地の方々と一体化して推進することが必要と思いました。可能であればこのコミュニティを大切に活動を継続できればと思いました」

「常識や世論、固定概念を疑うこと。 自分の目で見て、体験して、確かめてみることの重要性。 仕事や事業領域だけではない、越境の捉え方。 都市と地方を往復することで新しい何かを生み出せそうだという感覚(ぼんやりしているので、これからもっと実践して確かめてみたいと感じた)」

「同じテーマで課題解決を考えるというのを3グループでやったが、グループの参加者により何を誰とどうすると言う部分の切り口が全く異なっていたのが面白かった。もし自分が今回のグループと違うところに入っていたならば、別のアイディアを考えていたのだろうなと想像することができて、いろいろな可能性を感じた」

「学びの多いとても有益なプログラムをご提供頂きありがとうございました。微力かもしれませんが、今後も何らかの形で地方創生活動に参画して行けたらよいなと思いました」

今後は、北海道および苫小牧市が進める未来まちづくり戦略と接続しながら、GX関連産業、半導体関連産業、駅前エリア活性化、データセンターを含む新産業誘致、人材育成施策などにおいて、実証型の共創プロジェクトへ展開していくことを想定しています。

単発の研修として終えるのではなく、都市と地域を往復する継続的な学習と実装の場へ発展させていくことが、今後の重要なテーマです。さまざまな背景や職業、人生のフェーズ、世代の参加者が、社会課題の構造理解、共創によるアイデア創出、事業構想の言語化を実践的に学び、意識変革の必要性を理解する機会となりました。今後は、このようなコミュニティ活動の継続や実証プロジェクトの検討を通じて、地域と都市をつなぐ共創エコシステムの発展を目指してまいります。

参考・用語

・インタープレナー:社会起点で課題を捉え、組織や領域を越えて価値共創を進める越境型イノベーター。 越境共創人材とも言う。

・共創:企業、大学、自治体、市民など複数の主体が協働し、新しい価値や産業・事業、新規事業、社会イノベーションを生み出すこと。

・GX:Green Transformationの略。脱炭素と産業成長を両立させる社会変革。

・実証フィールド:新しいサービスや事業を実際の地域や施設で試し、改善していく実践の場。

・課題構造化:表面的な問題だけでなく、その背後にある構造や前提まで掘り下げて整理する方法。

・関係人口:移住者でも観光客でもなく、継続的に地域と関わる人々。地域共創の担い手になり得る存在。