
2026年8月29日、滋賀県甲賀市で第8回「co.shiga.5」が開催された。テーマは「移住・シティプロモーション〜滋賀の魅力を滋賀から発信〜」。今回の「co.shiga.5」をリビングラボ、新産業共創、インタープレナーという視点から見ると、これは単なる移住促進イベントではない。地域そのものをリビングラボとして、市民、行政、企業、地域の実践者が立場を越えて未来を構想し、インタープレナー同士がつながり、その対話から新産業共創の芽をつくる場である。
人口減少や若者流出が全国の地域課題となる中、「何人移住してもらうか」だけではなく、「地域に関わり続けたい人をどう増やすか」。その問いから、滋賀・甲賀に新しい地域経済と関係人口のエコシステムをつくる可能性が見えてきた。

今回のテーマの本質は、シティプロモーションを行政による情報発信だけで捉えないことにある。
SUNDRED株式会社は、個社や単一組織の都合から出発するのではなく、まず「実現すべき未来」を社会起点で描き、そこに必要な企業・行政・大学・市民などのエコシステムを形成することを「新産業共創」の基本としている。
この視点で考えれば、滋賀の課題も「移住者数を増やす」という一つのKPIだけでは捉えきれない。
滋賀で暮らす人、県外へ進学・就職した若者、地域企業、行政、スポーツクラブ、観光客などがそれぞれ異なる形で滋賀との関係を持ち続ける。その関係性そのものを地域の資産として育てることが重要になる。
co.shigaは、自治体・企業・学生・市民が地域課題をテーマに共創する仕組みを「リビングラボ」と位置づけている。これはSUNDREDが進める、実際の地域を舞台に仮説構築・検証・社会実装を進めるリビングラボの考え方とも重なる。

甲賀市の岩永 裕貴市長、株式会社雨風太陽の出原 敬介氏、一般社団法人co.shigaの中野 龍馬氏によるトークセッションでは、「なぜ今、選ばれるまちである必要があるのか」「滋賀・甲賀には何があり、何がないのか」「地域の情報を誰が発信するのか」が議論された。
重要なのは、観光地や特産品だけを「地域の魅力」とするのではなく、暮らし、人との関係、地域で活動する人そのものを価値として捉えた点だ。

続く共創ピッチでは、5人の実践者から異なる地域資源を起点とした構想が提示された。
木村 太郎氏は、市民・事業者・行政が地域の魅力を発信する「伝える人」を増やすシティプロモーションを提案。山本 和輝氏は、ゴルフ場をスポーツ施設だけではなく地域資源として捉え、「ゴルフのまち・甲賀」から観光、ジュニア育成、交流人口を生み出す構想を示した。
秦 裕樹氏は防災を入口とした地域連携、深尾 善弘氏は行政担当者と民間実践者・地域メディアが実践知を共有し、共同企画や制度改善、次年度予算までつなげるコミュニティを提案した。
株式会社滋賀レイクスの渡邉 大樹氏による「レイクス定住ビジョン」は、プロスポーツをハブに行政・企業・大学・ファンをつなぎ、若者が「滋賀に関わり続けたい、戻りたい」と思える接点を増やす構想だ。
これらは独立したアイデアではなく、組み合わせることで地域の新たな価値交換を生む「新産業共創」の種と捉えられる。

イベント後半では、約50分間の全員参加型ワークショップを実施した。
参加者はピッチで提示された構想に自分自身の知識、経験、人脈、アイデアを掛け合わせ、「甲賀市民全員インフルエンサー化計画」「ゴルフしない人、いらっしゃい作戦」などのアイデアを生み出した。
ここで重要なのがインタープレナーという存在だ。
SUNDREDでは、インタープレナーを「組織の枠を超えて社会起点で発想し、対話を通じて目的を共創し、仲間やリソースを集めながらプロジェクトを進める社会人」と定義している。
会社員、市民、行政職員、経営者という肩書きを一度横に置き、「滋賀をどうしたいか」という共通目的から対話する。co.shiga.5は、地域の中に潜在するインタープレナーが出会い、行動を始める装置になっている。

当日は予定定員50名を上回る約60名が参加した。ワークショップでは全グループがアイデアを発表し、本会終了後も約30分間の交流が続いた。初めてco.shiga.5に参加した人も多く、甲賀市外・滋賀県外からの参加も生まれた。
重要なのは、この場の成果を「交流できた」で終わらせないことである。
リビングラボの価値は、対話から生まれた仮説を地域で試し、検証し、次の事業・制度・プロジェクトへつなげることにある。SUNDREDもリビングラボを「プロトタイプの実証や社会実装を行う、新産業共創の未来を描くための実験場」と位置づけている。

次に必要なのは、今回生まれた構想を継続的なプロジェクトへ変えることだ。
例えば、市民による情報発信、ゴルフを起点とした観光・教育、防災コミュニティ、行政と民間による政策共創、プロスポーツを軸にした若者との接点づくりは、それぞれを単独で進めるだけでなく、相互につなぐことで新しい地域エコシステムになり得る。
co.shigaというリビングラボを継続し、対話→仮説→共創チーム形成→実証→社会実装という循環を地域に定着させること。その中からインタープレナーが生まれ、プロジェクトが育ち、やがて滋賀発の新産業共創へつながっていくことが期待される。
次回開催時期などの最新情報は、一般社団法人co.shigaの公式発信を通じて案内される。
事務局のレポートはこちら:https://note.com/co_shiga/n/n4b446488f977