
2026年7月26日、長野県軽井沢町で「炭素循環農法を知る・体験する」が開催されました。本イベントでは、炭素循環農法、腐葉土づくり、自然農法・自然栽培を現地で体験し、森林、農業、畜産をつなぐ地域資源循環の可能性を考えました。
農薬や化学肥料を一切使わず、軽井沢で焼却されてきた落ち葉を腐葉土(炭素素材)に変えて微生物の働きを活発にし、作物を育てる自然農法・自然栽培は、脱炭素・循環経済・地域産業創出を具体的に考える実践例です。環境経営、新規事業、サステナビリティ、地域共創に関心を持つ企業・自治体・事業者にとって、炭素循環農法と自然農法・自然栽培を事業と学びの両面から捉える機会となりました。
軽井沢では、別荘地や住宅地から大量の落ち葉が発生し、その多くが焼却処分されています。落ち葉には、樹木が大気中から取り込んだ炭素が蓄えられています。これを焼却せず、腐葉土として土壌へ戻すことは、二酸化炭素排出の抑制と土壌改良を同時に進める地域資源循環の取り組みです。
今回のイベントは、こうした地域課題を農業、森林管理、企業研修、環境教育へ接続し、新たな産業や事業を生み出す可能性を探るために開催されました。SUNDREDが重視する「新産業共創」の観点からも、単独の事業者だけでは簡潔しない地域循環モデルを、現地体験を通じて検討する機会となりました。
軽井沢ファームヴィレッジでは、担当者から自然農法・自然栽培の考え方と実践方法を学びました。
自然農法とは、化学肥料や農薬に過度に依存せず、土壌、草、微生物、植物の働きを生かして作物を育てる農法です。畑では雑草を排除する対象ではなく、「土を守る資源」として捉えます。刈った草を畑に敷くことで、土壌の乾燥や温度上昇を防ぎ、土の水分と柔らかさを保ちます。
担当者は「農業の8割は育苗」と説明し、苗を強く育てることの重要性を強調しました。水を毎日与えるのではなく、葉や根の状態を観察し、植物が必要とするタイミングで最小限の水を与えます。また、病害虫や雑草を排除するのではなく、それらも自然の一部として共生しながら、健康な苗と土壌環境を育むことを基本としています。
参加者は畑で野菜を収穫し、ハーブ、わさび菜、根菜類などを試食しました。自然農法で育てた野菜が持つ香り、辛味、甘味、食感を確認し、土づくりと野菜の個性の関係を体感しました。


葉乃畑合同会社の山岸征男氏は、軽井沢で発生する落ち葉を活用した腐葉土づくりについて説明しました。
使用する原料は、モミジ、クリ、ミズナラなどの広葉樹の落ち葉です。落ち葉を約25ミリメートルに裁断し、水と空気を加えながら約6~7か月かけて完全発酵させます。発酵促進剤などの薬剤は使用せず、好気性微生物の働きを生かすことが特徴です。
発酵には約60%の水分と十分な酸素が必要です。「切り返し」と呼ばれる作業で落ち葉を混ぜ、内部へ空気を送ります。発酵温度は最大約70度まで上昇し、温度、香り、手触りなどを確認しながら品質を管理します。
軽井沢では約30~40社の別荘管理会社が落ち葉の収集に関わっています。従来は廃棄物だった落ち葉を腐葉土へ変え、農地や花壇へ戻すことで、森林から土壌へ炭素を循環させる仕組みの構築に挑戦しています。


今回の現地体験を通じ、落ち葉回収、菜製造、自然農法、食体験を一つの循環として設計できる可能性が共有されました。
特に、腐葉土製造施設と自然農法の農園を企業研修や環境教育に活用する構想は、今後の事業展開につながる重要な論点です。森林管理会社、農業者、畜産事業者、企業、自治体、教育機関が連携することで、軽井沢の地域資源を活用した体験型プログラム、新商品、環境学習などへの発展が期待されます。
参加者との対話では、腐葉土製造施設を企業研修や地域学習の場として活用できるのではないか、自然農法と組み合わせて自然循環を体感するプログラムにできるのではないか、といった意見が交わされました。
野菜の収穫と試食では、香りや味の強さを通じて、栽培方法と土壌環境の違いを実感する機会となりました。腐葉土の発酵工程を見学することで、落ち葉が廃棄物ではなく、農業や地域産業を支える資源になり得ることへの理解も深まりました。
今後は、軽井沢の森林、落ち葉、農地、畜産、食を結ぶ地域循環モデルの具体化が期待されます。
企業向けフィールドワーク、環境教育、農業体験、地域資源を活用した商品開発など、複数の事業領域への展開が考えられます。腐葉土づくりと自然農法を個別の取り組みとして捉えるのではなく、森林管理、農業、畜産、観光、教育をつなぐことで、軽井沢ならではの持続可能な地域産業を生み出す可能性があります。